秋の夜長のLa-Vie-En-Rose

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この日は1セット目以降に仕事を控えており、スーツに身を包みテンションも50%という状態でバグに向かう。 「ジンジャエール1つ!」バーテンの驚きの眼差しを浴びながらバグで初めて味わう「ソフトドリンク」の味。 ひげをたくわえてイチローみたいになってるみっちゃんの生ビールが妙に眩しい。ソフトドリンクを飲み慣れない僕は ペース配分を間違えてすぐに飲み干してしまい、あわてて2杯目を頼んだところでライブが始まる。

小気味よいトリオ演奏でスタートだ。2曲目「When I Fall in love」はヴィクター・ヤングのバラード。 納谷さんのしっとりピアノで店内はイイ感じにリラックス。細川さんをお迎えする準備は万端である。 トリオメンバー紹介の後、いよいよ御大「細川綾子」さんが満面に笑みを浮かべてステージにご登場。 まだ一声も発していないのに、落ち着き、ゆとり、貫禄、品の良さ、いろんなものが瞬時に伝わってくる。 ステージがパッと華やいだように感じたのは僕だけだろうか。 「It's very clear 〜」第一声はこの言葉だった。そうガーシュインの「Our Love is Here to Stay」である。 数え切れないくらいのボーカリストに歌われている歌ものの定番だけに、ついつい「他の誰か」と比べてしまいがちな曲だ。 前もってCDを聴いてある程度、細川節に馴染んでいたせいもあり、最後まで誰とも比べることなく細川節を堪能できた。 やはり生歌に勝るものはない。細川さんのお住まいがあるサンフランシスコを歌ったご存知「I Left My Heart in San Francisco」も 披露された。どの曲も、あまりフェイクしないストレートな解釈に、よくのびる声質、年を感じさせない声量、 店内はある種の安心感と陶酔感に包まれていた。「La Vie En Rose」にナット・キング・コールの「Darling, Je Vous Aime Beaucoup」 を織込むという面白いアレンジを施してフランス語でパフォーマンスしてくれたりもした。しびれたな〜! 細川さんは、曲間のMCに必ず曲にちなんだお話しをしてくれてそれが粋な前説となり実にスムーズに次の曲に入ってゆく。 これがまた効果的で気持ちよい。例えば、ナット・キング・コールの曲だといって歌う前に日本語に訳して歌詞の内容を紹介してくれた。 ラブソングとは程遠いまるでイソップの寓話のような妙な歌詞である。 「こんな曲は知らないな」なんて軽く考えていたら、何と「Straighten Up And Fly Right」が始まったのにはビックリ! 今後、英語の分からないキングコール好きとお話しする機会があったら、僕は得意満面にこの「歌詞」を披露するであろうから、 キングコールファンは僕に近寄らない方がよいだろう。 「A Nightingale Sang in Berkeley Square」の前の話も面白かった。細川さんは偉大である。 酒も飲んでないのにこれほど「酔える」のだから。新しい自分を発見した気分だった。 けれど今晩はいつまでも酔ってはいられない。1セット終了とともに後ろ髪引かれる想いでバグをあとにする。 しかしながら、深夜0時、仕事を終えて打上げの後半にしっかり出席させていただいた。 打上げの時のマスターはいつになく上機嫌、ライブがよかった証拠である。 今回の来日では40日の内20日がステージというハードスケジュールで、いつも日本ツアーを終えてサンフランシスコに 戻られた後は、1ヶ月くらいボーットして過ごすと言っていた細川さん。ご自愛され、来年もまたバグで酔わせてください。

細川さん&納谷3 細川さん&納谷3
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