お待ちしておりました!

三槻さん

マスター 待ちに待ったとはこのことか。三槻さんのCD発売記念ライブがBAGUで行われたのが 昨年の4月1日、僕がBAGUに通い始めたのが4月18日、そして三槻さんのCDを購入した のが4月25日、すんでのところで三槻さんを聞き逃していたのである。4月1日といえば、 丁度僕が岐阜に引っ越してきた日だ。三槻直子も知らなきゃ、猿渡泰幸も知らない無垢な青年(?) だった頃だ。以来、常連さんとの会話の端々に「三槻直子」という名前が出るたびに、はたまた 毎晩CDを聞き込むたびに「本物聴きたい」という思いは募るばかり。昨年、稲沢のカンマーザール という小ホールでのライブでそのチャンスが巡ってきたが、車のパンクというアクシデントに見舞われ 到着が大幅に遅れ「ラスト3曲」しか聴けなかった。この日は結局CDにサインをもらいに行ったような ものだ。それに酒の一滴も飲んでいない。お次のチャンスは、山岡町で行われた野外ライブ。 芝生の上でビールを飲みながらのとっても気持ちのいいライブに大満足。これはこれでよかったのだが、 僕としては、やはりクラブで腰をすえて聴きたい・・・。そんな時、マスターの東京行きの話を聞いた。 しかしながら予定がはいっており東京までは行けなかった。そんな経緯を経て「今日のよき日」を迎えたという わけ。約1年間、三槻さんのクラブでのライブを待っていたことになる。雨の中、厳粛な気持ちでBAGU に向かった。レンガ通りには、後藤浩二トリオの演奏が響いている。雨に濡れた通り、店から漏れるリリカルな 後藤さんのピアノ・・・あまりにマッチしていてしばらく外で聴いていたくなったくらいだ。 ほぼ満席の店内、黙々と演奏するジャズメン3名。この3人だけでも十分に「スペシャル」なのだが、 数分後にはステージに三槻さんが現れると思うと、いやがおうにも期待が膨らむ。

1.How About You

スウィンギーなイントロと同時に真っ赤な衣装に身を包んだ三槻さんが満面に笑みをたたえて いよいよステージへ。まずはCD収録ナンバーで軽快にスタート。そう、僕が1年間待っていたのは まさにこの雰囲気、この音、このメンツ、そしてこの酒である。

2.estate

続いてもCD収録ナンバー。僕も学生時代にジョアンの「アモローゾ」にはまった口で、CDのライナー を読んだ時は、大きくうなづいたものである。秋に山岡町で聴いた演奏が思い出される。秋の野外もよかったが 春の夜、酒を飲みながら聴くのもよい。マスターのブラシが沁みる〜。

3.just one of those things

ここでCDから離れて有名なコールポーターのスタンダードが飛び出した。 35年のミュージカル「ジュビリー」のために書かれた古い曲である。 この曲は僕にとっては、かなり美味しい曲だ。静かなバースから曲調がガラリとかわるテーマに移ってゆく瞬間、ここが一番美味しい。 かつてローズマリークルーニーのそれを聴いた時にその不思議な魅力に取りつかれてしまった。 今晩のメンバーは、その一番美味しいところを、最高の技術で完璧に調理。 料理長は北川さんである。全員が北川さんのベースに先導されてグングン盛り上がっていく。 すばらしいの一言!

4.My Favorite Things

ここでちょっと、PAがおかしくなったようである。でも、三槻さんはまったく動じない。どんな 状態なのか我々に説明し、マスターが調整をしている最中に次曲の紹介をする。もちろん笑顔は絶やさずに・・・。 さすが余裕たっぷりの「プロ」である。ほどなくPAの調子も戻り、かの有名な「京都に行きたくなってしまう曲」が登場。 サウンド・オブミュージックの挿入歌でリチャード・ロジャースの作曲である。そしてこれまたCD収録ナンバー。 マークマーフィーは自分の好きなジャズメンを歌詞に盛り込んで歌っているが、僕も自分流にアレンジするとしたら、 「a song of a dolphin」がその歌詞に名を連ねることになるであろう。犬に噛まれた時や、蜂に刺された時に聴くのである。

5.Cheek to Cheek

CDのオープニングナンバーをここへ持ってきた。しかも後藤さんがこのツアー用にアレンジしたという。 確かにCDとはちょっと違う味わいで面白い。三槻さんをジンジャー・ロジャースとすると、アステアは・・・ 少なくともステージ上にはいない(笑)。きっと江戸にいるに違いない。

6.My Foolish Heart

三槻さんは懇切丁寧に曲の説明をしてくれる。題名から勝手に内容を類推して聴いている僕などは、ヴォーカリスト が歌詞の要約をしてくれると非常に助かる。中には「へー、そんな歌詞だったんだ」という新しい発見もあって面白い。 この曲もそうだった。「愚かなり我が心」、ヴィクター・ヤングの静かなバラードであるが、「いけませんわ、いけませんわ、 そんなことなさっては・・・、と言いつつ握られた手を絶対に離さない」という感じの歌だそうだ。 もう2度と恋などしないと誓った矢先に、また新しい恋に落ちてしまった。私って懲りないバカ。 でも、離さないで・・・。ハハハッ、日本にも似たような曲があったような無かったような。 とにかく倍楽しめた。

7.Honeysuckle Rose

またまた新発見!ハニーサックルローズって「すいかづらの花」のことだったんだ。 ファッツ・ワーラーのこの粋な曲、「every honeybee , fills with jealousy 〜」までしか知らず、 勝手に「バラの品種のひとつであるハニーサックルに、みつ蜂がたかる歌」なんて思ってた僕がアホでした。 「愚かなり我が思いこみ」なんちゃって!小気味よい演奏に酒がすすむ一曲。三槻ハニー直子さんもたのしそう。

8.Happy Birthday 'Mr.Kitagawa'

「今日、お誕生日の方がいらっしゃいます」といって歌いだした三槻さん。 お客様の中に運よく誕生日の人がまぎれているというのはよくある話で、 「誰、誰!」なんて客席を見渡していたら「♪happy birthday dear Kitagawa-san〜」ときた。 実は北川さんの誕生日だったのだ。盛り上がった、盛り上がった。果たして北さんはいくつに なったんだろう。今年、「年男」だという情報しかないため、皆目検討がつかないで困っている(笑)。 とにかくジャズマンとしてもっとも脂の乗ったお年頃であることは確かだ。

9.The Island

おっと、意外な曲が出てきた。ブラジル大好きの僕は思わず拍手〜! 作曲者イヴァン・リンスはMPBアーチストの中でも最もアメリカで売れた人ではないだろうか。 三槻さんはパティ・オースティンの「白い波」バージョン、つまり英語で歌ってくれた。 原題「comecar de novo」、ブラジルでもいろんな人に歌われている名曲である。 こんな曲がBAGUで聴けるなんて、三槻さんエライ!あまりジャズで取り上げられないが、MPBには面白い 素材がごろごろころがっている。ジャバン、シコ、カエターノ、エドゥロボ・・・。 三槻さんの次の一手が楽しみだ。

10.Vera Cruz

ブラジル物の連続(連ブラ)に、またまた拍手〜! 僕がCDの中で一番好きな曲である。カンマーザール、ヤマオカに続いて3度目だ。 マスターの壮大なドラミングに乗って、歌もピアノも南十字星まで飛んでゆく。 何度聴いてもいいなー。この曲でワンセット目が終了した。

鈴木4 今日は、明らかにお客さんが多い。勝手知ったるCDトリオ、そして三槻さんも東京を拠点とする歌手では あるが、岐阜のジャズファンにはとても馴染み深い人だ。その温和な笑顔と人柄、そしてステージを 離れた時の、飾らない等身大の三槻さん(結構酒好き)にはとても親しみを感じる。 今日は三槻さんのお知り合いのグループが、がわざわざ蒲郡からやってきてくれた。 岐阜の三槻ファンのみならず、東海地方の三槻ファン全員集合といった感じ。 「1枚目」をプロデュースした「2枚目(?)」の大野先生も久々のご来店。前日、TMDのライブでお世話になった アイランドカフェの平工夫妻、大井さん、もちろん岐阜のおっちゃん夫妻も指定席で鑑賞、CC夫妻は、三槻さんに歌を習っている 娘さんとご一緒にいらっしゃっていた。みっちゃん、クマちゃんはもちろんのこと、リーベ、ニュースタの面々も顔をそろえており店内は実に賑やか。 いー雰囲気で2セット目を待つ。当然、酒も進むわけである。今晩が岐阜・名古屋ツアーの最終日で、細かいことを言うと、間もなく 始まるであろう2セット目を最後に、しばらく聴けない日々が続くわけである。そんなことを考えながらグラスを傾けていたら、おもむろにトリオ演奏が始まった。 ざわついていた客席の目と耳が再びステージに引き寄せられる。ちょっと長めの1曲を終え、再び三槻さん登場。

1.Almost Like Being in Love

三槻さんは、なんと「お色直し」をして現れた。夜も深まった2セット目は、漆黒の衣装で勝負。 そういえば、お化粧もちょっと変わったかな?気のせいかな?自身、オープニングに好んで歌うという CD収録のジャンピングナンバー。手拍子をせずにはいられないくらいのノリノリの演奏だった。 三槻ワールド第二章は、トップギアから発進だ。

2.Morning

またまたラテン好きの血が騒ぐ一曲。クレア・フィッシャーの隠れたラテンジャズの名作「サルサ・ピカンテ」収録曲。 昔、このアルバムで一夏過ごしたことがある僕にとっては思い出深い曲。クレアのエレピと寸分違わぬ後藤さんのピアノイントロ、 マスターのラテンドラム、実にいい。三槻さんの、僕の好みをくすぐる選曲には完全にノックアウト。 しかしこの曲に歌詞があるなんて知らなかった。今まで熱帯の雨季の朝をイメージして聴いていたがはたしてどんな 歌なのだろう。

3.Speak Low

CD収録ナンバーから、クルト・ワイルの名曲をおひとつ。 まさに「耳元で囁かれているような」実にゆとりのあるスローボッサで演奏される。 心地よいことこの上無し!でも眠くなんかならずに最後までしっかり聴かせてくれるところはさすが。

4.I've got you under my skin

一変して、楽しい楽しいラブソング。本日、2曲目のポーターである。シナトラを聴いていると、この曲は「粋に歌ってなんぼ」の 歌なんだなーって感じてしまう。そしてスィング感、ドライブ感を損なったらこの曲は良さは半減する。 そうしてみると今日の演奏は、この曲の魅力が100%以上伝わってくるくらいの実に「粋な」演奏だった。 僕はこういう演奏を聴くためにせっせとクラブに足を運んでいるといっても過言ではない。

5.It's easy to remember

バラードである。ポーターに負けじとリチャード・ロジャースも2度目の登場。 三槻さんはコルトレーンの「バラッド」の演奏がお気に入りで、酒場で流れていよう もななら、ついつい「もう一杯!」そして「また一杯!」という感じで止まらなくなる らしい。その気持ち、よーくわかる。 このトリオ、この手の静かなバラードの歌伴をさせたらおそらく名古屋一であろう。 気持ちよく歌ってもらう。そんな心使いが随所にあふれている。これ、簡単なようで難しいらしい。 北さんのベースにその極意を見た!

6.Desafinade

「イパネマの娘」と並んで、ボサノバを代表するジョビンの曲。 もちろん英語詩もあるが、三槻さんはポルトガル語で歌ってくれた。 メロディーに乗せたときにもっとも美しい響きを持つ言語と言われるポルトガル語。 だから、ボサノバは本当は原語で歌ったほうが持ち味が出ていいのである。 この時の三槻さんもボサノバの「軽ーい、力の抜けた」感じが実によく出ていた。 もちろんバックのトリオも全員リラックス。ボサノバは頑張ってはいけないようだ。 誰かが頑張ってしまうとそこでスリーアウト・チェンジになってしまう。 ジョアン・ジルベルトはスタン・ゲッツが頑張ってしまった事にとても気分を損ねたらしい(笑)。

7.Love You Madly

デューク・エリントン作。初めて聴いたが、楽しい曲だ。 ノリノリの4人、歌っていて気持ちいーんだろーなー。聴いていても気持ちいいから・・・。

8.Nightingale Sang in Berkley Square

CD収録のこの美しい曲は、実は北川さんのリクエストだ。三槻さんからの誕生プレゼント。 北川さんはしばしお客様としてカウンターの一番前に腰掛ける。マスターもしばし店員として カウンターに。後藤さんと三槻さんのデュオで北川さんのためだけに切々と歌われたこの曲、 僕らもおこぼれに預かって、ささやかな感動を頂いた。

9.Old Devil Moon

このセットのラストはトリオが戻ってスタンダードで締める。店内からは、自然にかけ声と手拍子が響いてきた。 まるで、アンコールの先行予約だ。これだけ一杯歌ってもらって、「もう一曲頂戴」というのだからジャズファンとは 貪欲だ。後半は、スキャットを交えながら賑やかにエンド。

10.His Eye is on The Sparrow

アンコールにこれを持ってきた。言わずと知れたCDのクロージングナンバーである。 三槻さんは、ドルフィンになったり、ミツバチになったり、すずめになったり忙しい。 ゴスペルというのは、その日の終わりにとても合う。 粛々とした空気が店内を包んでやがて静かに演奏は終わった。その瞬間、キャンプファイヤーが終わった後のような寂寥感に包まれた。

さて、昨年のライブではきっとこの瞬間にCDが飛ぶように売れたんだろうが、今日は違った。 まあ、バグのお客様はCDもってて当たり前。入店時にCDを見せないと入れてもらえないくらいだ(これはウソです)。 殆どの人がCDを持ってるであろうが、今日CDか売れない理由は・・・「売るCDが無い」からである。 完売御礼というやつだ。売るCDが無くなったというなら次のを作ればよい。子供でもわかる簡単な話だ。 ところが、この業界「2枚目」というやつが存外難しいらしい。でも、ご安心を!もう次の作品に向けて、メンバー一同 動き出しております。来年の春にはきっと「2枚目」を携えてBAGUに来てくれることでしょう。ひょっとしたらとあるビッグネームも 一緒に・・・。そんなことを夢見て、僕はまた1年間じっと「待つ」ことにしよう。

学ぶ 学ぶ 飯沼さん
戻る