トータルコーディネーター

金子さん

プリンス 僕の今年のゴールデンウィークは金子さんのライブ(5/2「風庵」)で始まった。4連休を控えた木曜の晩。これほど 安楽に過ごせる夜は年間通してもそうあるものではない。手放しで楽しませて頂いた。そしてゴールデンウィーク最終日となる今日も 金子さんのライブで締めくくることとなる。4連休最後の日、明日からは仕事復帰・・・。これほど憂鬱な夜は年間通してもそうあるものではない。 普段なら陽が沈む頃にはすっかり気持ちはブルーになり、まんじりともせずに床に就くところであるが、今日は少々違って、 日没が待ち遠しかったくらいだ。本日晴天、少々風が強いが夏のような気持ちのよい陽気である。新緑が恋しくなり長良川界隈を散歩した後、 岐阜の名所のひとつ「金華山」に登りいい汗をかいた。僕にとっては、既にTシャツ1枚で十分な季節。そのまま岐阜駅に向かい、一旦BAGUを 通り越して、駅前でちょっとした買い物を済ませ、頃合を見計らってBAGUに突入する。既にお馴染みの顔が「音待ち」の状態で、タバコや酒も かなり進んでいるご様子。5分もしないうちに後藤浩二トリオ登場。お馴染みの「falling in love with love」に続いて、しっとりとした ラテンナンバーを1曲。僕は知らない曲であったが、後藤さんが珍しくMCで曲を紹介してくれたので助かった。 ミシェル・ペトルチアーニの「ブラジリアン・ライク」という曲だそうである。そして、いよいよ金子さん登場。 GW最後の夜は「you'd be so nice to come home to」で幕開けだ。途中、がらりとテンポが変わったかと思いきやそのまま 「don't mean a thing if it ain't got a swing」に移行。いきなりマスターのソロも飛び出し、オープニングにふさわしい 「ノリ」で一気に客席の温度もヒートアップする。このぶちかまし的なメドレーに「ヤーッ!」「イエー!」等々、様々なかけ声が 飛ぶ。一曲目から店内すっかりいい感じである。お次は長年歌い続けているという大切な曲「what a wonderful world」。 とても気持ちが入った歌唱であるが、けっして大仰にならず、「サラリ感」「わかり易さ」を伴った金子さんの熟練技を存分に楽しめる 一曲であった。そういう意味では次の「いとしのエリー」などはジャズで取り上げられることは滅多にないが、金子ワールドを表現するには 絶好の媒体ということになる。これまた10年以上歌い続けている曲らしく、「最近ではまるで自分の曲のように思えます」と語る金子さん。 ちゃんとバースも添えられ、歌詞も英語、もう金子さんの歌といっても誰からも文句は出ないほど「another Ellie」の完成度は高い。 僕はこの曲、いわゆる「リアルタイム」世代なので特に胸に残る一曲となった。さてさてお待ちかね、お待ちかね、なーんて僕が待っていた だけかもしれないが・・・「bridges」、ライブで好んで歌うという最新アルバム収録のこのミルトンナシメントの名曲。また聴けた、ラッキー! アメリカでは「ブラジルの声」と称されるミルトン、「日本の声」代表として既にこの曲をご自分のものにしている金子さんの歌からも 「ブラジルの大地」の風をほのかに感じることができるほど、さわやかな1品だった。「when the meadow was blooming」、これまた風庵に続き 「また聴けたナンバー」のひとつである。この曲は「小さな音で勝負できるトリオ」のバックも聴き所。金子さんの声が ささやくように、語りかけるように、僕らの耳を心地よくくすぐる向こうから、後藤さんのピアノの一点の濁りもない綺麗な音が、まるでビーズを ぶちまけたかのように客席に向かってキラキラ光りながら転がってくる。 そこに北さんのベースが「ボボボン、ドゥーン〜」と絡むともうゾクッと鳥肌が立つ!さらにマスターに「シャーシャーシャー」とやられた日にゃ、あーた・・・、 もう極楽でっせ!ヘッヘッヘッ!てな具合に一人で下品に身悶えていたら、1セット目最後の曲に突入。曲は一転して激しい「キャラバン」。 「大きな音もまかせてねトリオ」は、ここでは目いっぱい弾き倒し、金子さんの畏怖堂々とした絶唱を最大限に盛り立て、最後はピシャリと このセットを締めた。お見事!

北さん さて、2セット目のトリオ演奏では後藤さんのオリジナル曲が1曲披露された。スリリングな演奏により、ストレートなジャズの臭いが 店内にムンと立ち込める。10分を超える熱演の後、後藤さん自ら金子さんを紹介。陽気なラテンドラム、ラテンピアノのイントロでプレーヤー、客席ともに 口元が緩むなか、始まったのは「mambo inn」。ラテンスタンダードの中でもかなり陽気度数の高いこの曲、歌詞があったとは知らなかったなー。 MCで「p.s. i love you」と聴いた瞬間、僕は隣の席のみっちゃんと顔を見合わせて、「えっ、ビートルズ!」と叫んだ。 サザンがあるならビートルズも・・・。と身構えたが、これは大きな勘違いで、古ーいスタンダードの「p.s. i love you」の方であった。 この美しい正統派バラードには、はっきり言ってとろけました。そして追い討ちをかけるように「peal me a grape」ときた。 ダイアナ・クラールの歌にコロリとやられてしまった一人として、「金子さんの歌はいかに」と期待は高まる。 金子さんはご存知のようにお綺麗である。お年を重ねますますボーカリストとしての色香も加わっている。そう、あのクラールにだって 決して負けていないということだ。最近好んで歌っているというこの曲は、クラールより力強く、クラールよりわがままに、クラールより濃厚に・・・、 とにかくGOOD!もひとつおまけに北さんのベースもクラールより色っぽい!さて名作ミュージカルの挿入歌にしてジャズメン好みの スタンダード「my favorite things」も風庵に続いて2度目となる。バックのトリオが思う存分にソロをとり店内も最高潮に達した。 そして「no more blues」でエンディングになだれこむわけだが、ボサノバ1号曲といわれるこの曲を実に楽しそうに、笑顔いっぱい、 手拍子いっぱいのなか、客席と完全に一体となって歌う金子さん。こんな「no more blues(chega de saudade)」は初めて聴いた。 そのままアンコールを求める拍手の嵐に包まれ、最後の最後は・・・「moanin'」である。終了後、即座にCDを購入して憧れの歌手、 金子さんに握手とサインを頂いた。彼女は、経験と技術に裏打ちされた稀代のエンタテイナーであり、巧妙にライブを組み立て、 その場所の雰囲気に調和させる能力に長けた有能な「コーディネーター」でもある。僕らは、アミューズメントパークのアトラクション よろしく、晴美号に乗って「金子ワールド」のゲートをくぐった瞬間から笑い、涙、スリル、恋、嵐・・・様々な体験ができるわけだ。 すべて彼女の手のひらの上で・・・・。よって金子さんの場合、どのライブをとってもそのままCDにして売り出せるというくらいの 高い水準を保ち続けているに違いない。風庵しかり、BAGUしかり。さあ、「金子ワールド」のゲートを出て、今日のアトラクションは ひとまず終わり。明日からまた仕事が始まる。この躁な気分が壊れないうちに眠ってしまおう。

後藤さん フレンズ 金子さん
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