雲の上から降りてきたムレさん

ムレさん&岡安さん

今日のライブは感慨深い。僕の記憶は学生時代に遡る。当時、暇さえあれば入り浸っていた近所の文京区立小石川図書館という ところで、あるレコードを手にした。当時はかなりの雑食性というか音に飢えていたというか、ジャンル問わず、無節操に図書館の レコードを借りまくっていたのだが、そのレコードが目にとまったのは大好きなスタンダード「if i were a bell」が収録されていた ことによる。そしてもうひとつ、タイトルに凄く惹かれたことも選択理由のひとつだ。

「銀巴里セッション 1963年6月26日深夜」

この時代の日本のジャズはまったく聴いたことがなかったので、ひとつどんなものか試しに聴いてみるか。 そうそうたるメンツがクレジットされているが、僕には「スゴイ人たち」という認識しかなく、実際に 演奏を聴くのは初めてだったのだ。そんな中でも名前さえ初めて目にするジャズメンもいた。「中牟礼貞則」さんもその時初めて その存在を知ったジャズメンの一人。とにかく「if i were a bell」は絶品だった。以降、僕は中牟礼さんを本邦ジャズ界の大巨人として、 雲の上に祭り上げることになる。しばらくして、同じく図書館でレコードをあさっていたところ、意外なところで中牟礼さんの名前を見つけて、 ますます好きになってしまった。それは「中原めいこ」というポップシンガーのアルバム。そう、「君達キーウイ、パパイヤ、マンゴだね」のあの人だ。 気持ちのよいボサノバギターを弾いていたのが中牟礼さんだった。ホントに色んなところで活躍していらっしゃる。 今日は、そんな大御所中の大御所がしばし雲の上から降りてきて、ここ柳ヶ瀬で気鋭の若手ギタリスト岡安さんとの楽しい弦の対話を繰り広げてくれた。


first set

1.i'll close my eyes
2.st. thomas
3.in a sentimental mood
4.i remember april
5.c jam blues
>岡安さん
岡安さん、相変わらず綺麗な音です

猿渡さん
猿渡さん、素手ソロで奮闘中!

second set

1.i'm getting sentimental over you
2.samba de orfeu
3.body and soul
4.alone together
5.my one and only love
6.blue monk
7.it could happen to you (an encore)

オープニングの曲が非常にリラックスムードで始まった。中牟礼さんは背筋を伸ばし、そのままギターの教則本に載りそうな スタイルでしっかりとギターを構える。齢(よわい)70歳を数えようかと言うこのムレさんの肩にかかったストラップには、ギター だけでなく日本のジャズの歴史の重みがのしかかっているのだ。その姿を目の当たりにした時は、胸にグッと押し寄せるものがあった。 僕のそんな大仰な感動をよそに、演奏は実に軽妙洒脱、全く力み無し。いわゆる「小粋」に淡々と進んでいく。 岡安さんよりちょっと硬めの音で渋いソロを綴っていくムレさん。他のメンバーのソロの時には、神経質なほどチューニングとアンプの 音量に気を配る姿に、変わらぬ音へのこだわりを感じた。もちろん岡安さんの方が指はよく動くし、演奏中のアクションも多い。 しかし僕には、その横で直立不動で自らのスタイルを堅持する小柄なムレさんが、枝を一杯に伸ばした巨木に見えた。 親方の岡安さん、そしてバックの北さん、猿渡さんがすべて敬意をはらっている。岡安さんもトリオの時とはちょっと違った雰囲気だ。 同楽器異世代の共演は面白い!

これほど渋いライブが一般聴衆にウケるか?おそるおそる店内の反応を伺うことにした。心配するほどのことは無かった。 よくよく考えてみればBAGUのお客さんは例外なく岡安ファンである。毎年必ずツアーでやってくる。ギタートリオという 編成には慣れているといってもイイ。ではムレさんは・・・。心配ご無用!みなギターの大御所、岡安さんの親玉とでも思っている(笑)。 よって、ウケは上々だった。

今日は残念なことにちょいと用があり打ち上げに参加できなかった。でも演奏が聴けだけでも満足である。このメンツで名古屋、岐阜の6days。 ムレさんにとって、岡安さんにとってどんなツアーになったのだろう。次回、岡安さんが岐阜に来たときに是非うかがってみたいものだ。

岡安4
ライブは非常にリラックスしたムード
ムレさん
音へのこだわりが素晴らしいです


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