ちゅうまさんの始めの一歩

中馬さん

「1枚のチケット・ ・ ・新宿発名古屋経由岐阜行き」
中馬啓子さんは不思議な縁でそのチケットを手にすることになる。 その夜、彼女は歌の師匠であるヨーコ・サイクスさんのライブを楽しんでいた。 場所は新宿、お店は「J」。そして当然のように師匠ヨーコさんからステージに引き上げられ飛び入 りで1曲披露。実はこの時、ライブを楽しむ大勢のお客様の中に、名古屋・岐阜に非常に縁の深い今 回のツアーのキーパーソンとも言える人物が2名同席している。1人は三槻直子さん。中馬さん同様 飛び入りで1曲歌ったという。そしてもう一人はあのスターアイズのマスター岩城さんであった。

時と場所が移って、ここは名古屋のジャズ処スターアイズ。この日も北川さんのベースは冴え渡 っていた。納得のいく演奏を終えた北さんに岩城マスターが声をかける。

  「東京でイイ歌い手見つけたよ。中馬啓子って言うんだ。うちに呼びたいんだけど何とか連絡とれないかな」

そう、岩城マスターはあの時のたった1曲で中馬さんに惚れ込んだというわけだ。その時は特に話 をしたわけでもないらしい。後日中馬さんは「フッとすれ違っただけ」だと証言している(笑)。 くだんのチケットはその輪郭をあらわにし始めた。手がかりは「中馬」という珍しい姓、そして「三槻直子さん」、 「新宿J」の3つ。残念ながら名古屋で中馬さんを知るジャズメンは皆無であった。 こんな時頼りになるのが、東京方面にひろーいネットワークを持つ三槻さん。北さんは迷わず三槻さんに問い合わせ、 あっさり連絡先の入手に成功。 ここに「岩城マスター→北川さん→三槻さん→中馬さん」のホットラインが開通し、スケジュール調整及びツアーメンバーの 人選に至る。「チケット」発行の瞬間だ。

中馬さんの歌が首都圏外に出るのは初めてである。つまり今回は彼女にとっての初ツアー(業界ではビータ(旅)と言うらしい)。 それが名古屋で、しかもこのメンバー・・・彼女にはツキがある。もちろんツキも実力のうちであることはここで改めて述べるまでも ないだろう。

★おひげの恋人との再会

スターアイズ初日、岩城さんとの再会を果たしていざリハーサル。ダニー、北川さん、猿渡さん、皆初対面であるがバックにまわして 絶対に間違いの無いトリオである。違う意味で「間違い」が起こる可能性は無きにしもあらず…(笑)。 僕はスターアイズには行っていないのでその時の様子は描写できないが、2日目にある出来事が起こったらしい。まるで中馬さんの初ツアー に華をそえるが如くフラリと遊びに来たある有名なジャズバイオリニスト。そう、寺井尚子さんだった。偶然もここまでくると本物だ。 思わぬビッグネームとの共演が彼女の大切な初ツアーに弾みをつけた。そしていよいよ猿渡さん、北川さんの本拠地岐阜へ。 (フーッ!久々に長い前振りだったー)

天高く「耳」肥ゆる秋
季節は初秋、個人的には丁度ジャズボーカルが恋しくなる季節。BAGUのお客様は、ことジャズボーカルに関してはその楽しみ方を十分 過ぎるほど心得ていらっしゃる。それはボーカルを聴く「耳」が肥えているとうことに他ならない。 トリオ演奏を味わいながら、江戸からやってきた無名の歌姫「中馬啓子」を待つ店内は、その一挙手一投足も 見逃さないぞという張りつめた空気で充たされていた・・・。 なーんていうのはウソでみんないつものように超リラックス、「何が来ても楽しんだる!」という気持で彼女を待っていた。

名刺代わりの一曲はガーシュインの3.だ。歌ものの定番中の定番で潔く直球勝負である。 くせの無いストレートな解釈で一気に歌いきった。なんとも「活き」のイイ歌いっぷりに大きな拍手が起きる。 バラードの4.も同様、へんにテクを繰り回すことなく一節一節かみ締めるように客席にこの名歌をぶつけてくる。 6.は北川さんとのデュオで始まり、途中からダニー、マスターが素晴らしい絡み(?)で参加。 7.も8.も曲の良さを前面に出してサラリと歌いのける。まるで「スタンダードの世界へようこそ」と言うがごとく。 普通に歌うことの難しさ、わかり易く伝えることの難しさ。土台にしっかりとした基礎がないとできるものではない。 ガーシュイン、ロジャース、ワイル・・・先人たちが残してくれた遺産を、ほぼ原型のまま僕らに届けてくれる。 歌の素晴らしさが伝わっているかどうかは、お客様の様子を見れば一目瞭然だ。皆手放しで楽しんでいる。 1セット目ラストは「活きのよさ」が十二分に伝わる1曲。堂々としたゆとりのステージングでこのセット終了。つかみは上々!


ダニー

first set

1.we'll be together again (trio)
2.everytime we say goodbye (trio)
3.our love is here to stay
4.my romance
5.no moon at all
6.cry me a river
7.speak low
8.crazy he calls me
9.broadway

second set

1.tin tin deo (trio)
2.georgia on my mind (trio danny(vo))
3.you'd be so nice to come home to
4.lovin' you
5.shadow of your smile
6.killing me softly with his song
7.i'm walkin'
8.the very thought of you
9.autumn leaves
10.all of me (an encore)
北川さん

2セット目の2.はダニーの故郷の歌。マスターにとっての「柳ヶ瀬ブルース」のようなものだ(ちょっと違うか)。 ジョージア州アトランタ出身の彼は、星の数ほど演奏したであろうこの曲を自らの味わい深いボーカルで演出する。 ピアノの後ろで中馬さんもダニーの歌に思わずニコリ。演奏を終えて「ではホントの歌手を呼びましょう」といって 笑っていたが、ダニーも十分聴かせてくれた。

このセットはリクエストコーナーから始まる。まずはスタンダードに超がつくほどの人気曲を披露。 彼女のHPでスケジュールをチェックしたところ、どうやら定期的に歌を披露できる「ハコ」と呼んでも いいようなお店があるようだ。こういうところで日夜揉まれて磨かれているうちに、あらゆるリクエストに対応できる ジャンル不問のオールマイティな歌い手になっていくのであろう。4.や6.はそれはもう素晴らしい出来だった。 リクエストが無ければ聴けなかったかと思うと、リクの「主」(渋谷さん?)に感謝しなくてはいけない。 そんななか、飛び出した7.はこれまたR&Bのスタンダード。ファッツ・ナバロのジャンピングナンバーである。 店内はジェットコースターのように急上昇して嬌声とともに垂直落下。いやはや楽しい。 中馬さんもこの様子を見て思わずこんなMC。

  「ではみなさんの体のことを思って、バラードを1曲お届けします」

そして秋の夜長にしんみりと味わいたい8.、9.で締めくくる。 ここまできて、何か「中馬さん色」みたいなものが見えてきた。もし「利き歌」の会というのが あったら僕は中馬さんを当てることができるだろう(笑)。

中馬さん 猿渡さん

中馬啓子歓迎会開始!
今日は打ち上げというよりも中馬啓子歓迎会といったほうがいいだろう。 北川さんは岐阜の銘酒「三千盛」を、ダニーは泡盛の10年もの「千年の響き」をそれぞれ持参。 期せずして酒に囲まれた九州は宮崎出身の中馬さん。 もちろん出身地に違わぬ酒豪(本人は否定していたが)であった。 そして腱鞘炎もやっと峠を過ぎ、快方に向かっているというマスターも今日は絶好調!

  「江戸から来たジンは、うちでスル天食ってかんと帰らさんぞー!」

と一喝(?)!僕らも「そうだ、そうだー!」とあおりつつ超大盛りスル天のご相伴に預かった。 いつにも増して盛り上がった今日の「歓迎会」も閉店時間とともにお開き。 僕自身もフラフラで終わりの方はよく憶えていないという始末(はっきりいって撃沈しました)。 この3日間を通して果たして中馬さんにツアーの楽しさを味わってもらうことができただろうか? 無事(?)に歓迎会も済ませ晴れてBAGUの歌姫に名を連ねた彼女が次回岐阜を訪れるのはいつかな。 今度は、「BAGUではすっかりお馴染みの・・・」という枕詞をつけて紹介されることだろう。

打ち上げその1 打ち上げその2

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