岐阜に初夏を告げる歌姫

金子晴美さん

そよ風ふたたび
金子さんには若葉の季節がよく似合う。ちょうど1年前もそうだった。 「WHEN THE MEADOW WAS BLOOMING」が僕にそんな印象を植え付けてくれたのかもしれない。 毎月、実にバラエティーに富んだジャズメンが素晴らしいパフォーマンスを繰り広げてくれるこのスペシャルライブのステージ。 三槻直子さんや、赤坂由香利さんなど、毎年やってきてくれる「親BAGU派」ミュージシャンも少なくない。 本邦きっての人気ヴォーカリスト金子晴美さんが初めてBAGUに登場したのは昨年5月。 鮮烈な印象を残してそよ風の如く柳ヶ瀬を吹き抜けていった。
夏近し 鵜飼も開幕 長良川
そしてちょうど1年を経た今夜、あいにくの雨模様となったが、折しも岐阜に初夏を告げる風物詩「長良川鵜飼い」の開幕と時を同じくして、 再びBAGUにそよ風が吹こうとしている。「2年連続」しかも同月。 これはまさに岐阜のジャズファンに受け入れられた証拠であり、タイミングさえ合えば恒例ライブになる可能性さえある。
鋭い切れ味…懐刀ご同伴
今年の金子さんは最も信頼するピアニストであり、最新CDのメンバーでもある青木弘武さんとご一緒に来岐。 まさに懐刀ともいえる気心の知れたサイドメンご同伴、さらにリズム隊が岐阜最強「猿渡・北川ユニット」とくれば 嫌がおうにも期待は高まるというもの。 BAGU初登場、青木さんの実にきらびやかなピアノの音が心を浮き立たせてくれる。 1−2.はエロール・ガーナーのバラードだ。包み込まれてしまいそうな饒舌で綺麗なピアノは、かなりのポテンシャルを秘めている。 ソロ・ピアノでも十分聴かせてくれるのではないだろうか。
余裕のステージング
1−4.で金子さん登場。瞬く間に一年前が蘇った。1−5.では青木さんが「ピアニカ」ソロを披露。 青木さんにとっては旅の必需品だそうだ。ちょっとハーモニカに似た感じの素朴な音は右手で奏でられる。 残りの左手はピアノで伴奏をつけているのでいきなり音が薄くなることは全く無い。 そして、金子ファンお待ち兼ねは1−6。長く歌い続けていきたいと語るこの曲は、昨年と比べると1年分歌いこなされえただけ あってより味わい深いものになっていたような気がしたのは僕だけかな。 1−7.はアルバム(青森ライブテイクも収録)の話題に必ず付いてくるというオマケ的ピアノソロ。 金子さんは「この演奏聴きたさ」に、さりげなくMCでアルバムの話をするという。 このセットはラストは、お馴染みのエリントンナンバーを青木さんによる水戸黄門風味(?)のボレロアレンジで。 金子さんお得意のスキャットが実にスウィンギーで素晴らしい。続いて青木さんのピアニカソロ。 ピアニカは、意外なことに中近東系の雰囲気も持っている。そして北さん、猿渡さんもここぞとばかりにガンガン飛ばしていた。


first set

1.amapola (trio)
2.dreamy (trio)
3.stella by starlight (trio)
4.mac the knife
5.in the wee small hour of the morning
6.bridges
7.ringo oiwake
8.basin street blues
9.caravan
北川さん
北さんは長ーいGW明け?
青木さん
ピアニスト 兼 折り紙師、青木さん!

second set

1.stranger in paredise (trio)
2.kanasii iro yane (trio)
3.root 66
4.p.s. i love you
5.fever
6.mambo inn
7.love me tender
8.on the sunnyside of the street (an encore)

楽しくて、やがて悲しい「色」を見た
懐かしいヒット曲2−2.は、コテコテのジャズアレンジ。この演奏は是が非でももう一度味わいたい。いや!常に枕元に置いておきたい! それほど素晴らしいパフォーマンスだった。「悲しい色やね」を素材に「悲しみ」だけでなく「楽しさ」も同時に表現。 喜怒哀楽のぎっしり詰まった1曲は、本家上田正樹の弾き語りに匹敵するくらい説得力があった。
今日は母の日
2−4.は、古いスタンダードだが、僕は今日の今日まで恋人同士のラブソングだと思っていた。 ところが、実は母子の愛を歌った曲だということが母親でもある金子さんのMCで判明。 「お母さんが子供に書いた手紙」が歌詞の内容とのこと。日々のよしなし事を綴った最後に書き添えた追伸「i love you」。 金子さんは「いつかこんな手紙を書いてみたい」という。 因みに僕も母親が健在。今日の昼間「母の日だけど、ライブがあるので顔を出せないよ。また今度・・・」という趣旨の携帯メールを 打ったところ数分後に返信があった。さすがに「p.s.i love you」は付いていなかったが、行間からそんな雰囲気が十分伝わってくる。 そんな背景もあり、深く心に刻まれた1曲となった。
ここらでひとつ賑やかに
2−5.は北川さんの泥くさいベースがイイ感じで金子さんに絡んでゆく。上質な夜の音だ。 2−6.は、陽気なラテン・スタンダード。青木さんのピアノはこれでもかというくらい「ラテン」してた。 「ポパイのテーマ」なども飛び出して楽しさ倍増。ラストソングは有名なプレスリーのバラードで締め。 切々と歌う金子さんからバトンを渡された青木さんは再びピアニカソロを披露。今日はこのピアニカがとても効果的だった。
打ち上げの必需品は何?
演奏後はいつものように打ち上げ開始。 金子さんは「スル天」というキーワードで1年前のあの味を思い出してくれたようである。 山と盛られたまるでウエディングケーキのような超特大スル天「晴美スペシャル」は 瞬く間に皆のおなかの中に消えていった。 打ち上げに必要なものは何?ミュージシャン、馴染みのお客様、ほどよい(或いは度を超えた)お酒、 美味しい肴、深夜の魔力、そしてそこには「キーマン」とも言うべき強烈なキャラを持った人物の存在も必要不可欠だ。 「キーマン」により、知らず知らずのうちに打ち上げの色が決定付けられ、特異な空間が形成されてゆく。
さて、今日のキーマンは?
普段は当然ながら宴会大将「猿渡泰幸」がキーマンとなる。打ち上げは岐阜色一色に染まり、 江戸のミュージシャンは目を白黒させて圧倒されるという構図だ。 ところが今日はもう一人強力なキーマンが現れた。そては青木弘武さんその人。東京在住ながら、出身は滋賀の大津で「血」は関西人。 東京では「ジャズ界の嘉門達夫」と異名をとるだけあって、ピアノを離れてからもその「多芸」ぶりは目を見張るものがあった。 「眉芸」「パントマイム芸」「替え歌芸」「駄洒落芸」、旅で何百回と見ているであろう金子さんはフフフッと微笑むのみであったが、 僕らは腹がよじれんばかりに笑った笑った。悪代官に強敵現る!
来年の今月今夜
宴もたけなわ、恒例の記念撮影大会をもってお開きに。絶品ピアニカで「蛍の光」を演奏しながら退場しようとする青木さん。すかさず「何やらすねん!」とノリツッコミ。 ハハハッ、最後まで貪欲に笑いを取ろうとする「芸人魂」はピアノの演奏同様に素晴らしい。 果たして来年の今月今夜も金子さんの歌が聴けるのか・・・。金色夜叉の貫一ではないけれど、

  「来年の今月今夜のこの柳ヶ瀬の月、私の歌できっと晴らしてみせましょう」

なんてことになると面白い。果して「泰幸・お晴」の再開はあるのでしょうか? そして「ジャズピアニスト」と「折り紙師」の二足の草鞋を履く旅芸人、青木弘武は再び美濃の国で草鞋を脱ぐことになるのでありましょうか? 時は平成十五年、五月雨に濡れそぼる柳ヶ瀬に集うた4人の音曲師の物語。これにて一件落着〜!ベンベン!(来年に続く?)

金子さん
青木さんとの息はビータリッ!
猿渡さん
柳ヶ瀬のプリンスも本領発揮!
記念撮影
今日のメンバーはほぼ同世代!
青木さん
♪蛍の光〜って何やらすねん!

ママザウルス
青木弘武作「ママザウルス」

青木さんのもうひとつの顔

青木さんは「ピアニスト」であると同時に「折り紙師」でもある。 題材になるのは恐竜、しかも草食じゃないと食指がそそらないという かなりの恐竜フェチでもある。この晩はホテルに帰ってから、ママとCCさんの ために「ママザウルス」と「シノザウルス」を製作。朝、ホテルのフロントに預けて 帰京。後日ママさんがホテルに取りにいったものが左の写真。 実物は重量感もあり、かなりしっかりした作りでとても1枚の紙から折られたものとは 思えないほどだった。かなりの力作!


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