真夏の夜の夢

大野俊三カルテット
大野俊三(tp) 竹下清志(p) 北川弘幸(b) 猿渡泰幸(ds)

吉報は突然に・・・
その知らせが僕の耳に飛び込んできたのは7/29のこと。 仕事で名古屋に向かう途中、たまたまBAGUに寄った時だった。

  「な、な、何ですと〜!俊三さん緊急来日!しかもプライベートライブ!」

しかもライブまで1週間しかない。驚きに浸っている暇もなく、即予約(一番のり!)。 そしてその晩、早速HPで宣伝開始。さらにあちこちのBBSにお邪魔して書き込みしまくりである(笑)。

お詫びを少々
「一週間しかない」この切迫感から、普段以上にお客様集めに力をそそぐママさん、マスター、そして僕。 しかし主役が「大野俊三」であることを忘れてはいまいか。普段とは明らかに性質を異にする今回のライブ。 岐阜において俊三さんは、まさにカリスマ的存在。極端な話、誰かおしゃべりの好きなオバちゃんに ポロッとライブのことを漏らせば、3日後には満員札止めとなる、俊三さんはそのくらいの影響力を秘めているのだ(笑)。 今回もフタを開けてみたら予約の数は既にBAGUのキャパをはるかにオーバー。ラスト3日くらいは、 チケット完売ということで予約を「お断り」しなければならない事態に! ナベサダやヒノテルが来たってこんな騒ぎにはならないはず(まず来ないけど)。 というわけで、予約が間に合わなかった皆さん、誠に申し訳ありませんでした。(ペコリ)
夢見心地
「真夏の夜の夢」明らかにみんな夢を見に来ている。 そして俊三さんがステージに現れニコリと微笑んだ瞬間、スッと夢の中に引き込まれるような気がした。 1−1での第1音、昨年暮れに「真冬の夢」を見せてくれたあの俊三サウンドが再び日本に上陸! 既に客席から寝言(おしゃべり)は一切聞こえてこない。完全にこの心地よい夢に身をまかせていた。
俊三ワールド crush and build
1−2は、俊三さんの暖かさが身に沁みる日本の唱歌である。でもちゃんとストレートなジャズに仕上がっているんだなーこれが。 まさにワン・アンド・オンリーな世界。猿渡さんをフューチャーした1−3は季節モノ。 しかし「あー、サマータイムね」では済まないのが俊三さんの凄さである。「crush & build」心の深奥に横たわる サマータイムをまずバラバラに壊す。そして新しい俊三流サマータイムを構築していく作業。 4人でそんな作業を繰り返していく姿は、神々しくさえあった。そんな高度な作業を経て 幾百と繰り返されたスタンダードもまったく新しいモノとして僕らに提供されるのだ。 だから俊三ライブはやめられない!油断していたら切れ目なく1−4が始まる。 猿渡さん、俊三さんこの親友2人が仕組んだ粋な演出。やられた〜。
ん!?この人は・・・スゴイ
猿渡さんは言う。「名古屋圏で俊三についていけるピアニストは、納谷さんか後藤くらいや」。 ところが納谷さんは東京、後藤さんはラブリー。1週間という期間ではお客様よりミュージシャンを集める方が難しいのだ。 そんななか、北川さんが奇跡的に空いていた。これでまずは一安心。ピアノに関しては、地元のカンペイさんも候補に上がっていたが 結局、北川さんの強いプッシュで関西から竹下清志さんを招聘。岐阜のジャズファンにとっては初めて聴くピアニスト。 俊三さんへの注目度もさることながら、実は共演する竹下さんにも興味津々であった。 そして、期待をはるかに上回る好演を見せ付けてくれて皆、ピアノにもビックリ。納谷さんとも後藤さんとも違う、独自の世界を 持っていて、その綺麗かつアグレッシブなピアノは俊三さんのラッパに見事なほど呼応する。初共演とは思えないほどだった。


first set

1.stella by starlight
2.sakura
3.summertime
4.kahsan no uta
5.straight no chaser
北さん&俊三さん
竹下さん

second set

1.autumn leaves
2.maya
3.bubbles
4.alone together
5.cantalope island
6.old folks (an encore)

俊三さんは魔法使い?
俊三さんがグイッと引き上げてくれるのか、このバンドの猿渡さん、北川さんはホントにイイ。 可能性を200%出し切っているといった感じである。猿渡さんのソロを、時に真剣な眼差しで、時に笑みをたたえたやさしい目で 見つめる俊三さん。一方、時々俊三さんの姿にチラリと目をやりながらも必死の形相(?)で全力疾走する猿渡さん。 北川さんもちょっと薄暗くなったステージ奥で素晴らしいリズムを創出する。俊三さんは、二人になにか魔法の粉でもかけているようだった。 「この粉をかければ、ニューヨークでも通用するんだ」と悪戯っぽく微笑みながら・・・。
待ってました バブルス
2セット目はオリジナルも披露。2−2は娘さん「マヤ」ちゃんがよちよち歩きを始めたときに書いたと言う曲。 しかし、「愛娘」というキーワードからは想像できないくらいストレートなバップナンバーである。 そして待ってました(と皆が思ったはず)。2−3はアメリカでゴールド・ディスクを獲得した大ヒットナンバー。 ご本人は、

  「薬漬け時代に作った曲。あんまりいい印象はないけど曲の評判はいいので、反省の意味を込めてやります(笑)」

と冗談っぽく紹介。でもこの曲、ホントにキャッチーで暖かくていい感じ。 真夏のBAGUはどんどん熱さを増してゆく。夢はまだまだ醒めない。

北さん〜出番です!
2−4は北川さんの十八番中の十八番。トレードマークと言ってもいいだろう。 まわりもよく知っていて、この曲で「北川弘幸」をフューチャーすることが多い。 今夜は俊三マジックにより、ミュージシャンも客席も一種異様な興奮状態に陥っているなか、北川さんのベースも 冴えまくり。カデンツァでの味のある長いソロがやんだ瞬間、深い静寂が訪れた。余韻が実に心地よい。北さん絶好調!
柳ヶ瀬=ニューヨーク
俊三マジックといえば、今夜の柳ヶ瀬BAGUはニューヨークにも匹敵するくらい熱い状態になっている。 んっ、心なしママの髪もブロンドに見えてきたぞ。お客様の目も青く輝いている。そしてバーテンのゴリも「カクテル」のトム・クルーズみたいに・・・・これは絶対あり得ない! 俊三さんの魔法の粉のなかに裸でダイブでもしない限りは(笑)。 2−5は俊三さんの盟友ハービー・ハンコックの代表作。俊三さんのファンクナンバーも珍しい(?)。客席から自然にノリのよい渋いリズムのハンドクラップが沸き起こる。 あまりのリズムのよさにまわりをよーく見わたすと、みな肌の色が真っ黒になっていた。これも真夏の夜の夢である。
夜の果てに・・・
1曲を15分〜20分かけて綴っていった熱演も23時を越えていよいよラスト。 アンコールは、2−6。見事なクールダウンだった。「夢よ醒めるな!」と願っても無常に時は過ぎてゆく。 昨年、冬の来日時、最後の「風庵ライブ」で味わった何とも寂しい気持ちがフッと心をよぎる。 この寂寥感が、次回の来日ライブをかけがえのないものにしてくれることも今回よくわかった。 これってひょっとして「中毒?」。まあいいか。
さて、生活に戻ろうか
夢の正体は俊三さんの魔法だった。今夜はみなこの魔法にかかりにきたのだ。夏の暑さも、仕事の疲れも、すべて麻痺させて くれる魔法に。やがてママはブロンドから黒髪に戻り、客席の肌の色も黄色に。店を出てもそこに摩天楼の灯はない。 いつもの柳ヶ瀬が静かに佇んでいた。また明日から日常が始まる。「夏が来れば想い出す」僕にとってはそんなライブとなった。

猿渡さん 大野俊三4


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