「自由」な4人

岡安芳明トリオ+中牟礼貞則
岡安芳明(g) 中牟礼貞則(g) 北川弘幸(b) 猿渡泰幸(ds)

熱い夏の再来
2日前、嵐のサテンドールで聴いたバンドが、いよいよ地元岐阜にやってきた。 今日はおとといとは打って変わって台風一過の真夏日。気温はグングン上がってゆうに30℃を突破。 昨年の8月に続いて2年連続のご出演とあって、昨年惜しくも聴き逃した人、或いは昨年ハマってしまいどうしても今年も聴かなきゃ 気がすまないという人、はたまたウワサを聴きつけて是非聴いてみたいと駆けつけた人、そんな人々が三々五々集っていつの間にか BAGUは満席になっていた。
アイランド御一行様
岡安さんといえば、忘れてはならないのが県庁そばの『アイランド・カフェ』。 この地方でも最もコアな岡安ファンが集る店として有名な喫茶店である。 今夜も、当たり前のようにマスター・ママさんをはじめ、ウェートレスのycoさん、音響の高井さん、アンプの高井さんなどなど、フリークの皆さんが店内の一角に陣取っていた。 一瞬アイランドにいるような錯覚に陥ったくらい・・・(笑)。
インプロ御一行様
大垣のジャズサークル『インプロヴァイズ』。このサークルを主宰するギタリスト由川さんはかつて中牟礼さんのお弟子さんだった。 今夜は師匠の1年ぶりの来岐。もちろん由川さんにとって欠かせないライブであることは言うまでもない。 由川さんは、NAKAIさん、阪野さんなど自身のお弟子さんを引き連れてステージ最前列で師匠との再会を待っている。 そんな岡安応援団、中牟礼応援団のなかに僕ら猿渡・北川応援団も入り混じり演奏直前の店内はかなりヒートアップしていた。
大人の世界
4人がステージに立った瞬間、騒がしかったステージが静まりかえる。 2本のギターで滅茶苦茶スウィングしまくる挨拶代わりの1−1は、昨年夏と何ら変わっていなかった。 岡安さんのソロから始まった1−2、中牟礼さんのソロから始まった1−3、いずれもみんな相手のやろうとしている ことを瞬時に解釈して溶け入るようにその「音」に加わってゆく。「スタンドプレイ」や「あさってのプレイ」は皆無。 あくまでバンドのバランスに重点をおいた渋い大人の世界だ。プレーヤーが肩肘張らずに演奏しているのを見ると、 聴いているこちらもとてもリラックスできるもの。ギター同士のシャレたやりとりなんかも飛び出して、思わず客席もニヤリ・・・Yah!
プレーヤーズ プレーヤー
北川さんは昨年のこのツアーを終えた時、こんなことを漏らしていた。

  「いやー、ムレさんと一緒にできて本当に面白かった〜」

辛口で鳴らす北さんだけに、こういう素直な賛美は珍しい。僕らだけでなく一緒にやっているミュージシャンも 大きな刺激を受けているわけだ。岡安さんしかり、猿渡さんしかり。 この「2年連続」が実現した理由の一つに、「また一緒に演奏したい」とうプレーヤー側の実に明快な気持ちがあったことは容易に想像できる。


first set

1.all the things you are
2.old folks
3.alone together
4.blue monk
岡安さん&猿渡さん
中牟礼さん&北川さん

second set

1.it could happen to you
2.softly as in a morning sunrise
3.my one and only love
4.samba do orfeu
5.there is no greater love
6.now's the time
7.body and soul (an encore)

究極のジレンマ
2−2では、北川さんをフューチャー。このスタンダードを北さんにしか出来ないやり方で料理してゆく。 猿渡さんの高速ブラシが加わりドライブ感が増していった。凄いイイ雰囲気に仕立て上げたところで北さんが下がり、 まずはムレさん、そして岡安さんが交互にソロを取る。今日は客席が静かだ、静かに盛り上がっているのだ。 2本のギターで奏でる会話を聞き逃すまいと、みな全神経を耳に集中させているとでもいおうか・・・。 マスターは「イイ演奏の時は、オーダーが少ない」とたまに愚痴る(?)ことがあるが、今日は見事にそれに当たる。 イイ演奏を聴いてもらいたい、でもオーダーも一杯入って欲しい・・・店のオーナーであり、プレーヤーでもある猿渡さんの抱える究極のジレンマだ(笑)。
岡安さんの願い
ライブが終わって、まずはインプロの面々が中牟礼さんに飛びついていった。みんな目を輝かせて教えを乞うている。 別テーブルで岡安一派も打ち上げ開始。「自分がムレさんの年まで演奏しているイメージがまったく湧かない」と漏らす岡安さん。 途中、即席クリニックを終えてテーブルを移ってきたムレさん。ここで岡安さんはムレさんを目の前にして独り言の如くこんなことをつぶやいた。

  「オレ、実はムレさんに弟子入りしたいんだよな〜。でも今は酔っ払ってるから言えないし・・・。
      いつか、ムレさんが絶対に断れない状況を作って申し込んでみようかな」

ハハハッ、これはあくまで独り言・・・だけど、ムレさんにも皆にも聞こえよがしの独白だ(笑)。 当のムレさんは無言でニコニコと微笑むのみ。あくまで好々爺然を崩さない。しばらくして岡安さんがジャズに目覚めた頃の話になった。 今度は独り言ではないくみんなに直接語りかけている。

  「19歳の岡安少年は、ムレさんと稲葉さんの演奏を聴いて『何だこれは!』って思ったんだ。
    てんでバラバラなことやってたり、時にはそこ間違ってるんじゃないの?という演奏もあった。
   でもしばらくして気付いたんだ、『あーそうか、この音楽は自由なんだ』ってね」

ここで無言でニコニコ聞いていたムレさんが口を開く。

  「岡安くんがね。そういう僕らがやってるジャズの『自由』さに反応してくれたことはとってもうれしい」

岡安さんは、6月に稲葉さん、今回は中牟礼さんと、この世界に足を突っ込むきっかけとなった二人の巨人を順番に岐阜に連れてきて くれている。

異文化交流
今日はカウンターに一際目立つ髪形の若者がひとり。そのモヒカンの若者はBAGUではお馴染みのロックギタリスト、Shingoちゃんである。 今夜は猿渡さんの強い勧めでご来店。ジャズギターのライブなんて始めて聴くと言う彼にとってはまさに異文化の中に放り込まれたようなライブだったのではなかろうか・・・。 ひょっとしたら岡安さんではないが『何だこれは!』の連続だったかもしれない(笑)。 しかしジャンルは違えどギターで生計を立てようとしている立場は同じ。果たしてShingoちゃんや、その他の大勢いたギタリストの皆さんに 20年前岡安さんが味わった「自由さ」をわかっていただけただろうか。「岡安さんのギターを聴いてジャズを志すようになりました」そんな若手が現れるのも そう遠い話ではないだろう。

中牟礼さん&岡安さん 中牟礼さん&北川さん


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