楽しくなければジャズじゃない!

吉岡秀晃トリオ
吉岡秀晃(p) 北川弘幸(b) 猿渡泰幸(ds)

スマイル再来
吉岡さんは或る意味岐阜では有名人である。BAGU初登場は98年。 そのファンキーかつメローな演奏には強烈なインパクトがあり、瞬く間に岐阜のジャズファンの心をギュッと掴んだ。 「また聴きたいピアニスト」として事有る度に再演を望む声が聞かれるのも吉岡さんの人気ゆえであろう。 そんな声に答え続けてはや5年、今回でなんと4回目のBAGUライブとなる。 BAGUには「ジャズは良くわからないけどライブの雰囲気が好き」というタイプのお客様も多い。 吉岡さんの強みはそういったお客様の心もガッチリ掴んでいること。武器は演奏中に炸裂する「スマイル」。 これが我々に不思議な高揚感を与えてくれるのだ。
顔でも弾いてます
僕にとっても2年ぶりの吉岡さん。「音」を知っているだけに期待感はかなりのものだった。 いきなりオープニングから吉岡節が横溢。ラムゼイ・ルイスばりのファンキーなノリでまくしたてる。 もちろん表情も期待を裏切らない。真後ろの北川さんに、真正面の猿渡さんにこれでもかってくらいの「スマイル・コンタクト」を発信する。 1−2では、うって変わってネットリと絡みつくようなブルースを披露。眉間にシワを寄せながら、或いは恍惚の表情を見せながら、 はたまた口元に笑みをたたえながら、綺麗な「音」を紡いでいく。吉岡さんは「顔」でも曲を語れる「弾き語り」の名手とも言えよう。
あふれ出る名フレーズ
さあ、肩慣らしはここまで。1−3はいよいよ吉岡さんのハードバッパーとしての本領発揮だ。 猿渡さんも北川さんも絶妙の間でタイトに対応する。痛快無比!これぞジャズ!スマイルの頻度も一気に高まった。 吉岡さんがノッてるか否かを計る規準が一つある。演奏中に幾つの「スタンダード」のサビフレーズが顔を出すかである。 それもいかに絶妙のタイミングで飛び出すか。この規準から判断すると、今日は絶好調といってもいいくらいの状態。 もの凄いドライブ感を維持しながらスルリとはさみ込まれる馴染みのフレーズ。一体何度掛け声をかけたことだろう(笑)。 しかしこれは刹那のインプロヴィゼーションの中だけで許されるいわばジャズメンの特権だ。ライブを盛上げる効果的な手段でもある。 まちがって小説家がこれをやってしまうと大変なことになるので注意されたい。

  泰幸は百合子に意を決して別れ話を持ちかけた。

  「百合子さん、聞いて欲しい。我輩は猫である。名前はまだない」

  「なに言ってるの泰幸さん。長いトンネルを抜けると、そこは雪国だったんでしょ」

  「ある朝目が覚めたら巨大な毒虫に変身していた僕の気持ちにもなってくれ」

  「じゃあ、祇園精舎の鐘の声は百代の過客にして春はあけぼのって言ったのは嘘だったのね」

これじゃ、ストーリーにならない(笑)。


first set

1.???? (funk number)
2.black coffee
3.all the things you are
4.????
5.????
猿渡さん
北さん&吉岡さん

second set

1.????
2.????
3.will you still be mine
4.i remember april
5.????
6.billy boy (an encore)

ピアニスト必聴!
猿渡さんはライブ決定のときから、岐阜のピアノのジンに「絶対聴いといた方がエエぞ!」と強くプッシュしていた。 フタを開けたらいるわいるわ、カンペイさんをはじめ、岩田さん、新谷くん、麻衣ちゃん、リンペイくんなど 主要ピアニストがほぼ全員集結。多くの同業者の耳が吉岡さんのピアノに向けられていた。
ジャジャジャジャ〜ン
2セット目も頭からアグレッシブに攻めたてる吉岡さん。 ノリノリのソロの彼方から聞こえてきたワン・フレーズは何とベートーベンの「運命」だった(笑)。 こういう遊び心が実にうれしい。店内も大いに盛り上がる。これだけストレートなジャズのライブで 「大爆笑」が起きるなんて・・・貴重な体験。 マット・デニスの2−3もアップテンポで縦横無尽に踊るフレーズが痛いほど僕のツボを刺激してくれる。 痛快、爽快、満開、臨界!(何のこっちゃ)とにかく手放しで浮かれられるトリオである。
ぶっとびアンコール
最後までテンションは切れなかった。既に23時近くなっていたがアンコールの拍手は鳴り止まない。 さてここで何を持ってくるか!クールダウン系か、はたまたビート系か・・・・。 客席が求めていたのはモチロン後者である。吉岡さんもそれを十二分にわかっていて、始まったイントロは 「billy boy」。心の中で「いよっ!待ってました」と快哉を叫んだのは僕だけではあるまい。 ベニー・グリーンも真っ青のぶっとびビリーにもう白旗状態(笑)。こんな胸のすくアンコールは久々に体験した。
ふたつのジャズ
「歴史上、最も時間をかけて遂行された自殺」と称されたビル・エヴァンスの死。命を削りながら内向していったエヴァンスのピアノ。 それもひとつのジャズである。死を匂わせるものには不思議な美しさがあり、人を惹き付けて止まない魅力がある。 そしてその逆、「生」を感じるものも同様の魅了を持つのは確か。 吉岡さんの内面まで推し測ることはできないが、少なくとも我々聴衆から見るとそのピアノは「生気」そして「楽しさ」に溢れている。 フィリップ・マーロウの台詞を拝借して、あえて極論するならば

  「楽しくなければジャズじゃない。美しくなければジャズである資格がない」

今日は理屈無しので楽しいライブであった。元気を一杯もらって、吉岡さんには感謝感激。

吉岡さん 吉岡さん


戻る